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海のプラスチックに「街」を作る微生物たち — ゲノムが語るプラスチスフィアの生存戦略

深海ログ編集部
出典: GEOMAR / UFZ — How microbes survive in the plastisphere原文を読む →
共焦点レーザー顕微鏡で撮影されたプラスチスフィア。緑=細菌、青=藻類、赤=糖マトリックス、白=菌糸。Dr Thomas Neu / UFZ

海に漂う無数のプラスチック片。その表面には細菌、ウイルス、菌類、藻類が独自の生態系を形成しています。「プラスチスフィア」と呼ばれるこの微小世界の生存戦略を、ヘルムホルツ環境研究センター(UFZ)とGEOMAR海洋研究センターの共同チームが解明しました。

ゲノムが大きい — 栄養のない海で生き残る戦略

研究チームが北太平洋と北大西洋のごみベルトからプラスチック片を回収し、付着した微生物のメタゲノムを解析した結果、プラスチスフィアの細菌は海洋プランクトンよりもゲノムが大きく、機能遺伝子のコピー数も多いことがわかりました。

約340の主要機能遺伝子を分析したところ、栄養吸収、炭素源の利用、紫外線防御、ゲノム修復に関わる遺伝子が強化されていました。酸素を発生しない光合成(無酸素光合成)という代替エネルギー源も利用できます。

バイオフィルム中の微生物はより多くの遺伝子コピーを持ち、栄養素を効率的に吸収し、炭素源を利用・分解し、紫外線に対する効果的な防御機構を備えるか、ゲノムの損傷を迅速に修復できます

— Stefan Lips博士(UFZ、筆頭著者)

大西洋と太平洋で種は違っても機能は同じ

大西洋と太平洋のプラスチスフィアでは細菌の種構成が異なっていましたが、機能的に重要な細菌グループは両方の海で共通していました。どの海でもプラスチック表面で生き残るために必要な機能は同じということです。

プラスチックを分解してくれるわけではない

プラスチスフィアの微生物は周囲のプランクトンよりも多くのバイオマスを生産する能力を持ち、栄養の乏しい外洋に「富栄養化ニッチ」を作り出しています。しかし微生物はプラスチックを栄養源ではなく生息場所として利用しているため、海のプラスチックを除去する助けにはなりません。

微生物はプラスチックを栄養源ではなく生息場所として利用しているため、海のプラスチック除去を助けることは期待できません

— Erik Borchert博士(GEOMAR、共著者)

海洋環境については「アラスカの沿岸氷はなぜこれほど早く消えているのか?」もご覧ください。

筆者ひとこと: 微生物がプラスチックの上で独自の「街」を作っているイメージ、正直ゾクッとしました。

で、結局プラスチックは分解してくれない。海にとっては迷惑な居候なんですね。

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