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南極の氷が溶けた水はどこへ消える? MBARIが史上初の電磁探査で海底下の「配管」に迫る

深海ログ編集部
出典: MBARI — MBARI leads international expedition to study impacts of climate change on Antarctic seafloor原文を読む →
2026年1月の南極遠征中のスペイン極地研究船エスペリデス号

南極の氷が溶けたら、その水はどこへ行くのか

海に流れ出す。それはそうだ。でも、それだけじゃない。

溶けた水の一部は海底の地下に染み込んでいく。そこにはガスや地下水が流れる「配管システム」がある。MBARIのアーロン・ミカレフ上級研究員はそう表現した。問題は、その配管が温暖化でどう変わるのか誰もわかっていないこと。

南極初の電磁探査

2026年1月、スペインの極地研究船エスペリデス号で7日間の遠征が行われた。目的は南極海底の地下構造を電磁波で「透視」すること。

使われたのはCSEM(制御ソース電磁探査)という技術。海底に電磁パルスを送り込み、跳ね返りのパターンから氷や地下水やガスの分布を読み取る。探査範囲は40km。南極でこの装置が使われたのは史上初です。

海上クルーがCSEM電磁探査装置の展開を準備する様子
CSEM電磁探査装置の展開準備。海底の氷・地下水・ガスを検出する。Image: Aaron Micallef / MBARI

3つの調査地点で何がわかったか

調査はデセプション島、キングジョージ島、アストロラーベ海溝の3カ所で実施された。

いずれも南半球で最も急速に温暖化している南極半島西部のブランスフィールド海盆に位置する。海底堆積物のコアサンプルからは間隙水(かんげきすい)——堆積物の隙間にたまった水——を抽出し、溶けた氷の痕跡がないか分析した。

急速に温暖化する南極半島西部の氷河と海。青白い氷河の前に茶色の岩壁と緑がかった海が広がる
南極半島西部の氷河。南半球で最も急速に温暖化している地域のひとつ。Image: Aaron Micallef / MBARI

海底にも「生態系」がある

調査中に撮影された海底の映像も印象的だ。

褐色のゼラチン質のホヤ、黄色い海綿、枝分かれしたオレンジ色の海綿、ピンクのウニ、オレンジのヒトデ。南極の海底は想像以上に色鮮やかで、生命に満ちている。

南極海底の生物群集。褐色のホヤ、黄色い海綿、オレンジの海綿、ピンクのウニ、オレンジのヒトデが映っている
南極海底の生物群集。ホヤ、海綿、ウニ、ヒトデが共存する。Image: MBARI

研究者の声

南極の海底の下では、地下水とガスがいわば配管システムの中を流れている。これらのシステムは非常に重要だが、そのプロセスはまだほとんど理解されていない。

— Aaron Micallef(MBARI上級研究員、遠征リーダー)

ここで得たデータを完全に解読するには数カ月かかるでしょう。

— Aaron Micallef

北極の氷の変化については「アラスカの海岸を守る氷が消えていく」もご覧ください。

筆者ひとこと: 南極の「地下の配管システム」という表現が印象的でした。

氷が溶けたらその水はどこへ行くのか。海に流れ出すだけじゃなく、海底の地下にも染み込んでいく。そこで何が起きているかはまだほとんどわかっていないそうです。

ちなみにこの遠征、予定が変わったときこそ面白い科学が生まれる、と主任研究者が語っていたのが妙に心に残りました。

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