南極の氷の下で6日間 — 日本の自律型水中ロボットMONACA、行方不明から奇跡の回収

南極の氷の下で行方不明になったロボット
2026年3月15日、南極のリュツォ・ホルム湾およびトッテン氷河付近で、日本の自律型水中ロボット(AUV)「MONACA」がケーブルなしの2km自律航行試験を実施しました。計画通りの航行は完了したものの、浮上予定地点の海面が予想外の海氷に覆われており、MONACAは氷の下に閉じ込められてしまいました。
研究チームは音響コマンドで「再潜行→移動→再浮上」を繰り返し指示しましたが、氷の下の視覚確認は不可能。MONACAの行方は6日間、完全に分からなくなりました。
6日後の奇跡 — イリジウムビーコンが座標を送信
メインバッテリーが枯渇した後、独立電源で動くイリジウム衛星ビーコンが最後の希望でした。3月20日深夜、ついにビーコンがGPS座標を送信。MONACAが海面に到達していたことが判明しました。
翌朝、砕氷船「しらせ」のチームがMONACAを発見。予定浮上地点からわずか約800メートルの位置で、機体は無傷でした。
MONACAとは
- 国立極地研究所(NIPR)と東京大学が2017年から共同開発
- 日本初の南極探査用AUV — 海氷・棚氷の下を自律航行
- 従来の船では到達できない氷下環境の調査が可能
宇宙探査への道 — エウロパとエンケラドゥス
この技術が最終的に目指すのは、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスの氷で覆われた海の探査です。これらの衛星には地球外生命体が存在する可能性があり、氷下で自律的に活動できるロボットは不可欠です。
今回の「氷に閉じ込められて回収」という経験は、将来の惑星探査ミッションの設計に貴重な教訓を与えます。
海洋探査技術については「R/V Falkor (too) マッピング能力強化」もご覧ください。
編集部の解説
「失敗」が最大の学びに — MONACAが氷下に閉じ込められたのは予定外でしたが、この経験から氷下でのAUV運用の課題が実データとして蓄積されました。成功だけでは得られない知見です。
イリジウムビーコンという保険 — メインバッテリーが尽きた後も独立電源のビーコンが機能したことは、極限環境での冗長設計の重要性を示しています。
南極から木星の衛星へ — 地球の南極海は、エウロパの氷下海洋に最も近い環境です。MONACAの技術開発は、深海探査と宇宙探査の交差点に位置する日本独自のプロジェクトです。

