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海底の98%にアクセス可能 — シュミット海洋研究所がR/V Falkor (too)を大幅改修し、次世代AUV「子どもの皇女号」を導入

深海ログ編集部
出典: Schmidt Ocean Institute — Schmidt Ocean Institute Advances R/V Falkor (too)'s Mapping Capabilities原文を読む →

200万km²の海底マッピングを達成

シュミット海洋研究所は、R/V Falkor (too)を用いた海底マッピングが200万平方キロメートルに到達したことを発表しました。これはグリーンランドにほぼ匹敵する面積であり、まだ70%以上が未踏査の海底地図作成において大きなマイルストーンです。

そして同研究所は、この研究船をさらに進化させるための2つの大きなアップグレードを実施しました。

船首の大改修 — 科学調査のための再設計

2025年4月28日から6月28日にかけて、チリのタルカワノで2ヶ月間のドック入りが行われ、R/V Falkor (too)の船首が大幅に改修されました。

商業用オフショア船向けに設計されていた従来のバルバスバウ(球状船首)を撤去し、科学調査に最適化されたV字型船首に交換。これにより、ソナーの精度と信頼性が大幅に向上し、3メートルを超えるうねりの中でも高解像度データを取得可能になりました。

  • 6〜11ノット(約11〜20km/h)の速度で高品質なデータ収集が可能
  • 旧設計で問題だった気泡干渉を排除
  • 過酷な海況でも安定した計測を実現

次世代AUV「The Childlike Empress」

最も革新的なアップグレードは、最新鋭の自律型水中ロボット(AUV)「The Childlike Empress(子どもの皇女号)」の導入です。ドイツのKongsberg社製Hugin Superiorをベースにしたこの機体は、驚異的な性能を持ちます。

  • 最大水深6,000m — 海底の98%にアクセス可能(最深部の海溝のみ除外)
  • 最大72時間の連続潜行
  • 合成開口ソナー(SAS)で25センチメートルの解像度を実現
  • サブボトムプロファイラー、磁力計、環境センサー搭載
  • 酸素、メタン、溶存CO₂の計測が可能
  • CTDセンサー(導電率・水温・水深)搭載

研究者の声

かつて熱水噴出孔のような興味深い海底地形を見つけるのに数週間かかっていたものが、今では1日以内に関心領域を特定できるようになりました。

— ジェイソン・ウィリアムズ(エンジニアリング・シニアマネージャー)

Seabed 2030への貢献

シュミット海洋研究所は、日本財団-GEBCO「Seabed 2030」プロジェクトのパートナーとして、2030年までに全海底の高解像度地図を完成させるという壮大な目標に貢献しています。現在、世界の海底の70%以上がまだ詳細に調査されておらず、このAUVの導入は目標達成を大幅に加速させると期待されています。

AUVは2026年半ばに追加のトレーニングとフィールドテストを経て完全運用開始予定です。

編集部の解説

海底の98%をカバーする意味 — 水深6,000mまで到達できるということは、最深部のマリアナ海溝などを除く海底のほぼ全域にアクセスできることを意味します。これまで未踏査だった広大な海底地形の発見が飛躍的に加速するでしょう。

72時間の自律潜行が変えるもの — 3日間無人で深海を探索できるこのAUVは、人間の睡眠や交代に縛られない連続調査を可能にし、調査効率を劇的に向上させます。

25cm解像度の革命 — 従来の船上ソナーでは1〜50mの解像度でしか見えなかった海底が、25cmの解像度で見られるようになります。これは深海の「Google Earth」と呼べるレベルの精細さであり、小さな生態系や地質構造の発見につながります。

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