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海の解像度を上げたら熱波が見えた — 北大西洋が欧州の猛暑を生むメカニズム

深海ログ編集部
出典: GEOMAR Helmholtz Centre for Ocean Research Kiel — Climate Models with High Resolution in the Ocean Can Better Represent European Heat Waves原文を読む →
2015年ヨーロッパ熱波時の地表温度のNASA衛星画像

海を正確に再現すれば、熱波を正確に予測できる

ヨーロッパを襲う猛暑は年々深刻化しています。2015年や2018年の記録的な熱波を覚えている方も多いでしょう。実はこれらの極端な暑さの背後には、北大西洋の海水温が重要な役割を果たしていました。GEOMAR ヘルムホルツ海洋研究センターとマックス・プランク気象学研究所の新たな研究が、この海と陸の関係を解き明かしました。

北大西洋が欧州の熱波を「引き起こす」メカニズム

研究チームが明らかにしたメカニズムは次の通りです。亜極域(サブポーラー)北大西洋の海面水温が異常に低下すると、低気圧システムと相まって海から大気へのエネルギー輸送が増加し、海面をさらに冷却させます。この連鎖反応が大西洋の低気圧を安定させ、下流側にブロッキング高気圧を形成します。この高気圧が欧州上空に居座ることで、猛暑が発生するのです。

2015年と2018年のヨーロッパの熱波は、まさにこのメカニズムで引き起こされました。

2015年6月30日〜7月9日のヨーロッパの地表温度を示すNASA地球観測衛星画像。北大西洋の海水温パターンが熱波の形成に重要な役割を果たしている。
2015年の猛暑時のヨーロッパ地表温度。Credit: NASA Earth Observatory

海洋解像度が鍵 — 100年分のシミュレーションが示す証拠

研究チームはHighResMIPに参加する7つの気候モデルを使用し、100年間のシミュレーションを実施。海洋解像度を8〜100km、大気解像度を18〜200kmの範囲で変化させ、1979年から2019年の再解析データと比較しました。

高解像度の気候モデルは、北大西洋メカニズムに関連する熱波を粗い解像度のモデルよりもはるかに正確に再現します。この改善は主に海洋の高解像度化によるものです。

— Julian Krüger(マックス・プランク気象学研究所、元GEOMAR博士研究員)

解像度を上げることで、北大西洋の渦(うず)や前線がより現実的に再現され、海面水温のシミュレーション精度と海洋大気間のエネルギー交換の再現性が向上します。その結果、大西洋の低気圧と欧州の高気圧の持続性や強度が、観測データとより一致するようになりました。

海洋温暖化が微生物に与える影響については「温暖化する深海の意外な適応者」もご覧ください。

編集部の解説

「海の解像度」が気象予測を変える

気候モデルの精度向上というと、通常は大気の解像度が注目されます。しかし本研究は、海洋の解像度こそが欧州の熱波予測の鍵であることを示しました。海洋の渦(メソスケール渦)は直径数十kmしかなく、粗いモデルでは再現できません。8km解像度の海洋モデルがこれを捉えることで、大気への影響が正確に伝わるのです。

日本への示唆 — 黒潮と猛暑の関係

北大西洋と欧州の熱波の関係が明らかになった今、同様のメカニズムが日本周辺でも働いている可能性は十分にあります。黒潮の蛇行や海面水温の変動が日本の猛暑にどう影響しているか、高解像度海洋モデルを用いた研究が期待されます。

渦解像モデルの計算コスト — 科学とインフラの課題

渦を解像する気候モデルは計算コストが膨大です。しかし本研究は、そのコストに見合う成果が得られることを実証しました。スーパーコンピューターの性能向上とともに、こうした高解像度モデルが標準になる日も近いかもしれません。

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