自律型フロートが暴いた海の窒素循環。酸欠帯の化学反応は想像以上にダイナミック
出典: MBARI / University of Miami — MBARI technology provides new insight into hidden ocean chemistry原文を読む →

酸欠帯に隠れていた窒素の動き
海中で酸素が極端に少ない領域では微生物が独自の化学反応で窒素を変換しています。その実態がどれほどダイナミックなのか、船からの観測だけではわかりませんでした。
マイアミ大学とMBARIの共同研究チームが、BGC-Argoフロートに搭載されたISUSセンサーのデータを新しい統計手法で解析しました。その結果、酸素欠乏帯での窒素循環がこれまでの想定をはるかに超えてダイナミックに変動していることが明らかになりました。
自律型フロートが見たもの
BGC-Argoフロートは海中を自律的に浮き沈みしながらデータを集める観測装置です。船による観測では数日間の断片的なデータしか得られませんが、フロートは数カ月から数年にわたって広い海域を連続的にカバーできます。
今回の解析では、従来のセンサーデータに隠れていた亜硝酸塩とチオ硫酸塩のシグナルを検出することに成功しました。窒素の変換経路が海洋の状態に応じて動的に切り替わっていることが示されています。

研究者の声
窒素のレベルは海洋の生産性、地球規模の炭素循環、さらには大気中の温室効果ガスのバランスを左右します。
— Mariana Bif(マイアミ大学)
酸素欠乏帯は以前考えられていたよりはるかにダイナミックです。微生物が窒素を大気中に逃げる形に変換しているのです。
— Ken Johnson(MBARI上級研究員)

なぜ窒素循環が気候に関わるのか
海中の微生物が窒素を変換するプロセスは、亜酸化窒素(N₂O)という強力な温室効果ガスの放出にもつながります。酸素欠乏帯の広がり方が変われば窒素循環も変わり、大気の組成にまで影響する可能性があります。
フロートによる連続観測がなければ、この変動は見えないままだったかもしれません。

海洋の化学変動については「海洋温暖化で古細菌の窒素循環が変わる」もご覧ください。
筆者ひとこと: 「船では見えなかったものがフロートで見えた」。海はずっとそこにあったのに、私たちの観測手段が追いついていなかった。それだけの話なんですよね。
窒素が大気に逃げるメカニズムもずっと前から起きていたのかもしれません。
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